スタッフ紹介

自分の親に作るような気持ちで、
お客様の食事を作る。
ずっと食べつづけてほしいから

調理師 森野健一

僕の仕事は、お客様の食事を作ることです。みやこ食品で働いて13年。今は厨房のチーフをしています。

調理師歴は30年近く。ここに来る前は、小さな飲食店で働いてました。

みやこ食品に入った当初は、作る量の多さに戸惑いましたね。日によりますが、昼食だけでおよそ900食ほど。それだけの量を作るのは、数人分の調理とは作業工程がまったく違うんです。肉も何十キロと使うし、野菜だってキロ単位。醤油だって、普通の料理なら大匙や小匙で計るけれど、ここはリットル単位で使いますから。

そんな量作ったことがなかったから、最初は味の感覚がわかりませんでした。今は、13年の経験から「この調味料をこのぐらい入れれば、こういう味になる」とわかりますね。

栄養士さんが作成したレシピどおり作るけれど、最終的には、調理師が味見しながら味を調えます。みやこ食品のお弁当は高齢者向けの介護食なので、基本的に塩分ひかえめ。味見したとき、僕の味覚でバッチリだと、それは介護食としてはダメなんですよ。「もうちょっと何か足したいな」と思うぐらいがちょうどいいんです。

一般的な介護食のほかに、減塩食や疾病食も提供しています。病気のお客様が食べるお弁当ですね。こっちは介護食よりもさらに薄味。醤油も、減塩醤油を使います。

甘みを出すときも、砂糖ではなく甘味料を使っています。砂糖よりはかなり糖分が抑えられますよ。

体調や歯の状態に合わせて、
ストレスなく食べられるのが一番

お客様の中には、噛む力や飲み込む力が弱い方もいらっしゃいます。寝たきりの方もいらっしゃるし、ヘルパーさんが食事の介助をしている場合も。お客様の状態に合わせて選べるよう、いくつかの食形態を用意しています。

ほとんどのお客様が普通食で、次に多いのが、普通食を細かく刻んだきざみ食。ムース食とミキサー食はそれぞれ少数です。
ムース食は口の中で溶ける、ババロアのような食感。ミキサー食は、普通食をミキサーにかけるので、形がほとんどありません。

ミキサー食のお客様は特に飲み込む力が弱いので、喉を詰まらせないよう配慮が必要です。具体的には、とろとろにしすぎず、あえて喉に引っかかるくらいのとろみにしています。と言うのも、食べものが喉に詰まったとき、気管につるっと入ってしまうと危ないんですね。喉で引っかかったほうが、吐き出せるので安全なんです。

みやこのお弁当 ミキサー食

途中で食形態を変更するお客様も多いです。普通食を食べていたけれど、咀嚼する力が弱くなってきたからきざみ食に変更したり。さらに噛むのが困難になれば、ムース食、ミキサー食と変更することができます。
反対に、きざみ食から普通食に戻す方もいらっしゃいますよ。「入れ歯を新しくしたら噛めるようになったから、また普通のご飯にしてほしい」とか。

変更については、配送員や事務に気軽に相談してほしいですね。そのときどきの体調や歯の状態に合わせて、ストレスなく食べられるのが一番ですから。変更していくことで、長く食べつづけてもらえたら嬉しいです。

見栄えにも気を配る。
お弁当箱の蓋を開けたとき、ワクワクしてほしいから

お客様のお弁当を作るときはいつも、自分の親に作るような気持ちで作っています。これは以前、ほかのスタッフとも話し合ったので、僕だけじゃなくみんなの共通認識ですね。

具体的に気をつけているのは、たとえば一口のサイズ感と柔らかさ。食材は意識してかなり小さめにカットしますし、お肉も野菜もだいぶ柔らかく煮ます。

見栄えやボリューム感も大切にしています。お弁当箱の蓋を開けたときに、見た目が楽しくないとがっかりですよね。料理は、味と健康も大事だけど、見て楽しむのも大事ですから。
出来上がった料理を盛りつけてみて、ちょっと彩りが寂しいなと思ったら、「次回はパプリカで色を足そう」と栄養士さんに提案したり。煮物の人参を、花の形に飾り切りしたりもしますよ。さすがに量が多いので、飾り切りはカット業者さんにお願いしていますが。

また、お客様によっては、食べる何時間も前にお弁当が届くんですね。みやこ食品では温蔵庫の貸し出しをしているんですが、温蔵庫に長時間入れると、料理が乾いてしまう。なので、料理をしっとりさせる工夫をしています。焼き魚なら、塩焼きじゃなくて照り焼きにしたり、あんをかけたり。

美味しく、食べやすく、美しく、自分の親に食べさせる気持ちで。それはいつも、心に留めています。